SPORTS HUB

そもそも総合型地域スポーツクラブって何なの?~SPORTS HUB vol.5~

前回(vol.1)は総合型地域スポーツクラブのクラブマネージャーが3名揃った形でしたが、今回は「サブスク型キッズスポーツクラブ」という独自路線を進む方に1名入っていただくことができました。

そのおかげで、「総合型地域スポーツクラブと、地域スポーツクラブの違いは?」「概念的なもの?認証制?」「どっちがいいの?」など、素朴な疑問からの議論が活発に行われ、そこから発展して地域にとってのスポーツやスポーツクラブのあり方は?なども話をすることができました。

内容が非常に濃く多岐に渡っておりますが、これを読めば地域スポーツクラブへの理解が深まりますので、ぜひ最後までお付き合いください。

登壇者自己紹介

※詳細なプロフィールは記事の一番最後に記載しています。

松嶋:それではまず、自己紹介をお願いします。

上杉:東京都出身、会社員を経て2013年に長野県喬木村に地域おこし協力隊として赴任しました。総合型地域スポーツクラブ「たかぎスポーツクラブ」のマネジメントがミッションで、任期満了後も含め計7年間クラブマネージャーとして活動ました。2020年いっぱいで退職し、今年からは埼玉県富士見市で新たなクラブ立ち上げにチャレンジしつつ、たかぎスポーツクラブのアドバイザーとしても活動します。

伊賀上:富士見市とはなにか縁があったのですか?

上杉:富士見市の隣にふじみ野市という市があるのですが、そこの総合型地域スポーツクラブ「ふじみ野ふぁいぶるクラブ」のクラブマネージャーさんと以前より仲良くさせていただいてました。ある時、富士見市でも立ち上げの動きがあるということをお聞きし、関わらせていただくことになったのが経緯です。

松嶋:長野から埼玉に引っ越されたばかりですよね。活動状況はいかがですか?

上杉:まだ引っ越して2週間も経っておらず、この情勢も含めてなかなか動けていませんね。

松嶋:そうですよね。なかなか地域スポーツにとっても厳しい情勢です。上杉さんは前回の座談会にも参加いただきました。今回もよろしくお願いします。次に、木原さんお願いします。
※上杉さんの活動内容は前回記事(vol.1)も参考にしてください。

木原:徳島県で活動しています。本業はサラリーマンとして別にあるのですが、3年前に子どもの体操教室を開始しました。そこで感じた課題は、小学校低学年はカバーできるけどその後メジャースポーツに流れてしまい、そこで合わずにスポーツ自体を辞めてしまうということです。これを変えたいと思い、1年前に8種目のスポーツを経験できるサブスク型のクラブ「Sowers sports club」を立ち上げました。他にも大人のバク転教室や徳島ヴォルティスのチアダンスコーチなどをしています。今日は勉強させていただきたいと思い参加しました。

松嶋:本業もありつつものすごい活動量で、かつサブスクなど新たな取り組みをされていて、こちらこそ勉強になりそうなことばかりです。最後に伊賀上さん、お願いします。

伊賀上:地元は愛媛県松山市です。「今治しまなみスポーツクラブ」のクラブマネージャーをしており、半年前に松山市に引っ越しました。今治しまなみスポーツクラブは2007年から体育施設の指定管理者をしており、現在は約30施設の管理運営をしています。また、会員は1,200人ほどいます。

松嶋:僕はずっと関東の人間なので、四国の地理に詳しくなかったのですが、木原さんのいらっしゃる徳島県小松島市と、伊賀上さんのいらっしゃる愛媛県今治市は車で3時間くらいかかるのですよね。

木原:そうですね。小松島市から今治市は、京都くらい遠いイメージです(笑)。ただ、やはり同じ四国ということで繋がりは感じますよ。

 

「種目固定ではないからこそ、新しい繋がりができ、他種目にも発展する」

松嶋:前回は総合型地域スポーツクラブのマネージャー3名でしたが、木原さんは「総合型」ではなく独自にスポーツクラブを立ち上げされています。ここら辺の違いなどを掘り下げていきたいなと思っています。

上杉:木原さんのSowers sports clubのサブスクリプション型は気になっていました。

木原:私のクラブでは、月会費980円で1回1時間×計16回のすべての教室に参加する権利があります。各回追加1時間は500円の料金をいただいており、それは全てスタッフの謝礼金に充てています。場所、備品、保険などは全て980円のなかでやりくりしていますが、ほんとうはスポンサーを集めて無料にしたいくらいなんですよね。

上杉:ちなみに、活動場所はどうされているのですか?

木原:県内いろいろな体育施設を借りています。教室は月に8種目を2回、計16回という構成で、指導者となる大学生が空いている時間に、空いている施設で実施しています。そのため、毎週決まった場所、決まった種目、というわけではありません。

上杉:場所や種目を固定化しない、というのは柔軟性があっていいなと思っています。施設は予約できるんですか?

木原:施設確保はやはり難しいですね。特に土日は厳しいです。

上杉:県内様々な体育施設で、ということでしたが、物理的にどのくらいの距離であれば参加してくれるものなのでしょうか?

木原:徳島は完全に車社会です。感覚値ですが、20㎞くらい自宅から離れていても参加してくれるのではないかと。

上杉:たかぎスポーツクラブを運営していた長野県は完全に車社会だったのですが、埼玉県富士見市がどうなのかはまだ掴み切れていないんですよね。自転車の方もよく見かけます。場所を固定しないサブスク型もおもしろいなと思っていますが、もう少し地域特性を探ってみたいと思います。

木原:総合型地域スポーツクラブは、例えば自前の施設を建ててしまう、という考え方はないのでしょうか?まだ抽象的ですが、倉庫を改築するなどして、自分たちで場所をつくるのもアリかなと思っています。

伊賀上:かなり少ないと思いますね。学校体育施設や公共施設を使うことが多いです。ただ一方で、公共施設は既存団体でいっぱいなので、新規参入のハードルは高いですよね。先ほど木原さんがおっしゃっていた倉庫を改築する、という発想は面白いと思いますよ。

木原:他のクラブで実施している例をみて、自分の施設を創るのも夢ではないのかな、と思ったんです。作ってしまえば貸出もできますし。

伊賀上:倉庫を改装するとしたら会員とともに創るのもいいですよね。思い入れもできますし。

松嶋:上杉さんは喬木村で多目的施設の設立も経験されてますよね。

上杉:喬木村の場合は補助金で自治体が建てる形でしたが、企画段階から関与させていただきました。ボランティアセンターや防災拠点などの機能を合わせ持っていましたが、通常時はほとんどクラブで利用していましたね。

話が戻ってしまいますが、固定の場所を持たずにサブスク型で県内様々な場所で実施していくと、コミュニティとしてはどうなるのでしょうか?

木原:現在会員が80名いて、1回10~15名程度来ていただいています。毎回「はじめまして」も、もちろんいますね。種目固定ではないからこそ、新しい繋がりができ、他種目にも発展するのではないかと思います。

また、スポーツ活動以外での繋がりや目標もつくるようにしています。例えば「チームウェアを作ろう」となったときに、デザインを自主的につくる動きができたりします。そうなると、保護者も関わってきて親同士のコミュニティもできますよね。

松嶋:確かに、捉え方や運営の方法次第ですね。Sowers sports clubでは大学生が指導者をしているのも色が出ているような気がします。

木原:皆さんは指導者の募集はどうされてるのですか?

伊賀上:現在募集はしていませんね。地元の種目協会に話をしたり、フリーで活動している人にお願いしています。専属ではない外部指導者です。

木原:取り合いになりませんか?徳島は指導者が少ないし高齢化している印象です。Sowers sports clubでは大学生が中心で、指導力は多少落ちてしまいますがフットワーク良くパワーがあり、楽しい教室になっていると思います。

伊賀上:今治は近くに連携できる大学がないんですよね。確かにどうしても同じ人になってしまいますし、高齢化もしてしまいます。若い指導者の発掘や活用は課題です。

木原:Sowers sports clubでは、専門的な指導者を探せていないため大会などは目指していないのですが、総合型のクラブでは大会にも出場しますよね?

伊賀上:大会の要件に合わせるチームを作れば出場はできます。ただ、費用面も含めてスクールとチームの考え方は別ですよね。

また、総合型地域スポーツクラブと言えど、ひとつの種目だけに通っている方が大多数です。複数種目に通っている方が少ないので、木原さんの活動はとても珍しいしおもしろいです。最初から設計しているから成り立つのだと思います。

 

「結局は理念じゃないかと思っています」

松嶋:先ほど木原さんからスポンサー獲得という話が出ましたが、総合型でスポンサー営業などはされるのですか?

伊賀上:スポンサー営業もしますが、活動理念によるのかなと思います。なぜクラブを立ち上げるのかによって巻き込んでいく人が変わりますよね。ただ立ち上げるだけではどうしても活動も運営もボヤっとしてしまいます。理念に沿った運営をしてキーパーソンを巻き込んでいくことで、経営体として確率されていくのだと思います。

松嶋:木原さんは兼業ですが、今後スポーツクラブ運営のみにシフトすることも考えているのですか?

木原:本業も好きなので、今は両方やりたいと思っています。今の形であれば、スポーツクラブで得た利益は宣伝や備品に再投資できますし。これが段々大きくなって、時間が足りなくなってきたら考えるべきかなとは思います。

松嶋:木原さんは個人で立ち上げられて、独自路線で運営されています。総合型地域スポーツクラブのお二人から見て、このクラブは総合型にすべきかどうか。メリットデメリットなど教えていただけますか?

上杉:総合型地域スポーツクラブは、世代や種目を問わないという概念的なものではないでしょうか?

木原:私も今後は小学生で終わらずに中・高・大・社会人へと続くスポーツ環境を整えたいとは思っています。

上杉:広くカバーしていことで、自然に総合型地域スポーツクラブになると思いますよ。

木原:私のイメージですが、総合型地域スポーツクラブは指導者の年齢層が高く20代~40代が抜けてる印象です。あと、補助金を受けやすいなど。Sowers sports clubは、教えているのは大学生が中心で、自治体などとはほとんど繋がっていません。

松嶋:そもそも、総合型地域スポーツクラブはどうやって立ち上げるものなのでしょうか?

上杉:長野県喬木村では準備委員会ができました。その後、住民合意などを経て設立となりましたが、立ち上げるという動きが出始めたらどんどん進むように思います。助成金などの話になるとまた少し時間がかかると思いますが。

松嶋:総合型地域スポーツクラブの定義ってあるんですか?登録が必要、など。

伊賀上:今後、日本スポーツ協会の認証制度にしていく流れはありますね。コロナの影響もあり遅れていますが、一定の要件を定め、各都道府県で審査団体が設けられる予定です。この認証を受けるメリットは現状はっきりしていませんが、質の向上を目指しているのだと思います。

組織体制をどうするかも、どういう理念・目的でクラブを設立し、運営するかによりだと思いますよ。認証される総合型地域スポーツクラブはNPO(非営利団体)になるかと思いますが、地域スポーツクラブでも株式会社もちろんありますよね。その方が動きやすさはあるかと思います。個人的に木原さんのクラブはこのまま独自路線の方が良いのかなと。

松嶋:認証を受けることで補助金の申請や施設利用もしやすくなると思います。どういう要件になるかわかりませんが、非営利団体ということにはなりますよね。また、公共の資源を使うことなるので、しっかりとした説明責任も発生してきます。

伊賀上:その通りですね。ただ、NPOといえどお金を稼がなければいけないし、スタッフは生活をしなければいけません。事業体にしていくことは必須です。

松嶋:伊賀上さんのクラブは施設管理など公的な側面が強いですが、一方でJFAアカデミーの運営事業もしています。かなり特殊かと思いますが、この経緯は?

伊賀上:JFAアカデミーの地域展開構想があった際に今治への誘致に動きました。クラブ創設の経緯として創設者にはスポーツと教育に投資するという理念がありました。また、サッカーへの想いも強く、その理念と想いを根本にクラブ運営を継続していたからこそ、話があがった時すぐに誘致へと動けたのだと思います。結局は理念じゃないでしょうか。

松嶋:なるほど。前回も「いかに自治体と長期的ビジョン共有して動いていくのかが重要」という話題になりました。そのひとつの答えのような気がしますね。

 

持続性がなく、個人依存

松嶋:話題が少し変わりますが、今課題になっている「部活動問題」について、地域スポーツクラブとしての意見をお聞きしたいです。令和5年度を目途に地域に移行する流れとなっていますが、その実態はどうなんでしょうか?

伊賀上:まずは今後の部活動の在り方を各市町村で定義する必要がありますよね。社会体育か学校部活動か。今は社会体育にしていく流れで、そうする場合は地域側がどう準備するか考える必要があります。ここら辺の捉え方は、地域や人によってもかなり違うと思います。

松嶋:現状の部活動は、学校に紐づいているようで顧問の先生に紐づいているのではないかと思っています。熱心な先生が異動すると、移動先の部活が発展する。これでは持続性がないし、個人依存ですよね。これを地域に移行すると、持続性があるとは思っています。

伊賀上:松山市は50万都市ですが、各学校と各地域クラブが連携していく動きはありますね。今治市は人口15万人で15の中学校がありますが、生徒が少ないので学校単位では成り立たなくなっているんですよ。その解決策のひとつとして、ブロック制は検討されています。15校を4~5ブロックにわける考え方です。15校それぞれ単体で解決するのは難しくても、ブロックにすれば指導者確保も可能という話もありますよね。

ただ、既存の各団体の規定などもあるため、考えつつ課題を抽出している段階かと思います。そこのサポートを地域スポーツクラブができたらとも思っています。

松嶋:確かに地域スポーツ側の視点からするとブロック制は自然ですよね。喬木村ではどうでしたか?

上杉:喬木村の隣の飯田市では、学校部活動から地域クラブにという流れは既にあり、トライアルが始まっていましたね。ただやはり賛否両論で、指導力、異動、熱心にやりたい先生や保護者などの課題は出ていました。

地域スポーツクラブでその役割受け持つことはもちろんできると思いますし、多様性が広がると思いますが、会費の問題は出てきますよね。今まで公的な機関で先生の時間で実施されていたものなので。

松嶋:「学校部活動」という仕組みが長すぎたので、なかなか変えるのは難しいと思いますが、まずはそれぞれの地域でトライアルを始めることが大切かなと思っています。スポーツクラブのあり方と同じで、地域によって解決策も違ってくるかもしれませんね。

そろそろ1時間半となります。あっという間の時間でした。まだまだ深堀りしたいことはたくさんあったのですが、また次の機会としたいと思います。今後も、全国各地で地域スポーツの現場同士のネットワークを作っていけたらと思っていますので、よろしくお願いします!本日はありがとうございました!!

 

あとがき

「認証制度」は置いておくとして、地域住民全員がスポーツで幸せになるためには誰でもいつでもスポーツができる環境を整える必要があり、結局「総合型」になっていく。当たり前のことながら、この文脈を理解せずに「総合型地域スポーツクラブ」という言葉ばかりがひとり歩きしているように思います。

言葉にとらわれずに、何のためにそのクラブを設立するのか、何を軸にしていくのか。それらをしっかり見据えた上で、最も効果的な事業形態を見つけていくことが、地域スポーツの発展に繋がるのではないかと思った今回でした。

▼サイドストーリー

座談会メンバープロフィール

上杉健太さん

2013年に長野県喬木村に地域おこし協力隊として赴任。「たかぎスポーツクラブ」のマネジメントを手がけながらWEBでの発信活動も実施している。2021年1月からは埼玉県富士見市での総合型地域スポーツクラブ立ち上げにチャレンジしつつ、たかぎスポーツクラブのアドバイザーも務める。

▶ 長野県喬木村の総合型地域スポーツクラブ「たかぎスポーツクラブ」:https://takagi-sportsclub.jimdofree.com/
▶ note:https://note.com/kenta_manager
▶ Twitter:@kenta_u2

伊賀上哲旭さん

学生のときに愛媛大学総合型地域スポーツクラブの設立に関わる。卒業後、愛媛県西予市の嘱託職員として総合型クラブの育成を中心としたスポーツ振興に行政から携わり、その後、現職であるNPO法人今治しまなみスポーツクラブへ。

▶ 愛媛県今治市の総合型地域スポーツクラブ「今治しまなみスポーツクラブ」:https://www.imabari-shimanami-sportsclub.org/
▶ Twitter:@jooo00o

木原敬太さん

大学卒業後、スポーツグッズ店へ就職。その後商社に転職し、空き時間に各スポーツクラブ設立。本業として現在も商社に勤めながらスポーツ活動を展開している。
体操教室代表(2017年設立、30名)。藍ノオト大人のバク転教室部長(2018年設立、220名)。サブスク型キッズスポーツクラブ代表(2020年設立、80名)。徳島ヴォルティスチアダンスチームのアクロバットコーチ。

▶ 徳島県のサブスク型キッズスポーツクラブ「Sowers sports club」:https://peraichi.com/landing_pages/view/sowerssports
▶ 「徳島でスポーツを頑張る子供達100人にオソロイの練習着をプレゼントしたい!」クラウドファンディング実施中!:https://camp-fire.jp/projects/298779/preview?token=3lzv3joy
▶ Twitter:@sportsschool_kt

松嶋康平(主催)

フリーランススポーツプランナーとして活動しております。詳細なプロフィールはこちらから。

▶ Twitter:@matsuhira90

 

-SPORTS HUB

© 2021 まつひら屋/地域スポーツプランナー Powered by AFFINGER5